日本文化の再構築を、酒蔵の再生事業を通じて実現する

この計画は、日本の精神文化の中心地である富士山麓で、200年以上続く酒蔵の21代目当主との出逢いから始まる。ここには、富士山麓の厳しくも豊かな自然環境の中で、長年育まれ続けてきた伝統的な酒造りに対する揺るぎない自信がある。更に言えば、ここでの酒造りには、日本文化の本質的な特質が、酒造りという形になって、あらゆるところに表現されている。そして、その文化の根幹を支えるものは、世界的に見ても極めて稀な多様で変化に富んだ自然環境の中で育まれてきた、日本人が持つ独自の自然観である事は、間違いないだろう。

この計画は、こうした歴史の文脈の中心にあり、一つの酒蔵の建築計画としてのみならず、これからの日本の文化をどのようにして未来に繋げていくのかという大きな問いに対する答えを見出す作業であり、そうした意味からも計画段階より多くの人々の注目を集めている。

具体的な計画領域は、湖畔にある10000平米を超える敷地での新たな文化施設の建設や既存施設、文化財等の修復を中心としながらも、その枠組みを大きく超えて多岐に渡っている。例をあげると、全体の街区都市計画の策定、地域コミュニティーの活性化を生み出すための企画、新しい産業を創出するためのプランの立案、グローバルな環境でのネットワーク構築支援、最先端テクノロジーの導入、国際的な芸術文化交流の推進等、その仕事は広範に及び、期間も10年以上の長期計画として、今も尚進行中だ。

現在、世界中で進むボーダーレスな経済社会の中で、こうした素晴らしい日本の酒作り文化を継承していくためには、様々な外的環境の本質的な変化を理解し、そうした現実に真摯に向き合い対応していく事が欠かせない。素晴らしい伝統を受け継ぐ酒蔵として、未来に大きな夢を描きながら、建築を中心として、様々な領域のプロフェッショナルが、互いに理解を深め合いながら連携し、具体的な解決策を見出していける事が、多くの人々がこのプロジェクトに大きな期待を寄せている理由である。

Back to List