トレドは、中世の街だ。
車のない時代につくられたので、道幅は狭い。
どの路地も、両側は同じような石の壁で遮られていて、自分がどこに向かっているのか分からなくなってしまう。道の先に見える風景が頼りだ。同じ路地でも、アジアの開放的な雰囲気とは随分違う。
この緊張感・・・空間が明確に分けられていて、光が鋭く差し込む感じ。全てが構築されているような感覚は、教会に一歩入った時の、ハッとする感じに似ている。
街並みが先なのか、心の風景が先なのか・・・たぶん実際には、それらは交互に折り重なっていくのだろう。 街の風景は、自然環境や地形、様々な技術や経済などの社会状況といった事が、複雑に積み重なって出来上がってくるが、不思議に思うことが一つある。
長い目で見ると、その風景とそこで暮らす人々の心の風景、感触がとても似ていることだ。
もし街並みや建築が、人間の心にそれだけ決定的な影響を与えているのだとしたら、日本はもう少し大きな視点で、それらを考え直す必要があるかもしれない。